「なげる〜んを使ったトレーニングが投球動作に及ぼす影響」
川上 貢、渡邊 正和 (福岡大学スポーツ科学部)
1.概要
「ピッチング」とは実に不可解なもので、きょう完封した投手でも次に投げた時にメッタ打ちに遭うことがよくある。
「よいピッチャーとは?」と問われた時、ほとんどの人は「コントロールがよいこと、ストレートが伸びること」と答える。
このようにある程度のスピードボールを投げることが投手には求められる。
バイオメカニクスにおいて、この速いボールを生む投動作は腰→肩→肘→手首→指先→ボールの順に中枢部から末端部に向かって効率よく加速する「運動連鎖」が不可欠であるとの考え方が主流である。
また、手塚はこの考え方に腕全体のネジり戻し運動の要素を加えることで、より実践的な「ネジり運動連鎖」の概念を見出した。
この2つの運動は「二重振り子運動」「二重回旋運動」であり、いずれも円運動の利用になる。
この科学的理論を長年の経験から実感し、効率よい円運動を身に付けるために今任が考案したイマトニックアームを使ったトレーニングがある。
これは、投球動作は「2つの円」と「3つの三角形」で成り立ち、投手が「これらを意識し、身につけることで制球力、球威あるボールを投げることができるようになる」という理論である。
筆者はこの理論に共感し、イマトニックアーム(なげる〜ん)を使ったトレーニングの効果をみることを目的とした。